サビキ釣りでイワシの群れに当たると、「釣れたのはうれしいけれど、これを全部どう食べよう」という問題が急にやってきます。
今回のようにまとまった数のイワシを持ち帰ったなら、全部を同じ料理にするより、当日食べる分、翌日に回す分、数をまとめて使う分に分けて考えると楽です。小さいイワシは唐揚げ、大きめは中骨を外して調理、数が多ければつみれに回す、といった具合です。
さらに新潟には、柏刈地域の「いわしのぬた」「いわしのつみれ汁」や、新潟市西蒲区角田浜の「なまぐさこうこ」のように、イワシを食べ、保存してきた地域の食文化も残っています。この記事では、釣ったイワシを無理なく食べ切る実用的な流れに、新潟らしい食べ方を重ねて紹介します。
新潟でイワシが大量に釣れたら、まず「食べ切り方」を決める
たくさん釣れたイワシは、最初に「当日食べる」「翌日に回す」「保存向け」の3つに分けると扱いやすくなります。全部をきれいに開いてから献立を考えるより、魚の大きさと数を見ながら用途を先に決めた方が、下処理も単純になります。
- 当日食べる:小型なら唐揚げ、大きめなら中骨を外してフライや唐揚げ。
- 翌日に回す:低温を保って保存し、加熱料理を中心に使う。
- 数が多い:つみれのように、数匹をまとめて使える料理へ回す。
特にイワシは鮮度の低下が早い魚です。「あとでまとめて処理しよう」と常温に置くのではなく、持ち帰ったら低温を保ち、できるだけ早く内臓を処理することを優先します。詳しい持ち帰り・下処理手順は別記事へ分け、このページでは料理の選び方を中心に扱います。
当日なら唐揚げが手軽|小骨まで気になりにくくするコツ
小型のイワシを手早く食べるなら、唐揚げはかなり扱いやすい料理です。市販の唐揚げ粉を使えば味付けも簡単で、表面をしっかり乾かして揚げるだけでも仕上がりが変わります。
唐揚げ粉を使うときの基本
- 下処理したイワシの水分をキッチンペーパーでしっかり取る。
- 唐揚げ粉は厚く固めず、全体へ薄く均一につける。
- 小型なら160〜170℃程度で中まで火を通し、一度休ませる。
- 最後に180〜190℃程度で短時間揚げ、表面をカラッと仕上げる。
二度揚げは「骨そのものを溶かす方法」ではありませんが、身と衣の水分を飛ばして食感を軽くしやすい方法です。小型のイワシなら細い骨ごと食べやすくなりますが、魚が大きくなるほど背骨は残ります。中型以上なら、無理に骨ごと食べようとせず、中骨を外してから揚げる方が確実です。

骨が気になる家族がいる場合も、「小さい魚だけ骨ごと」「大きい魚は開いて中骨を外す」と分ければ、同じ唐揚げ粉でまとめて調理できます。
新潟らしく食べるなら「いわしのぬた」と「つみれ汁」

新潟県の柏崎地域振興局が公開している「食の歳時記」では、柏刈地域の郷土料理として「いわしのぬた」と「いわしのつみれ汁」が掲載されています。どちらも初夏の料理として整理されているため、10月に釣れたイワシをそのまま「昔から秋に食べる郷土料理」と説明するのは正確ではありません。一方で、新潟でイワシをどう食べてきたかを知る手がかりとしては面白い料理です。
いわしのぬた
「ぬた」は酢味噌で魚や野菜を和える料理です。釣ったイワシをすべて揚げ物にせず、さっぱりした一皿へ振り分けたいときに候補になります。ただし、生または加熱が不十分な魚を使う場合は寄生虫対策が必要なので、釣った魚だから安全と決めつけないことが大切です。
いわしのつみれ汁
数が多いときに実用的なのがつみれです。複数匹をまとめて処理でき、中骨などを外した身を一度に使えます。唐揚げを何十匹も揚げ続けるより、後半の魚をつみれに回した方が調理の負担を減らしやすいでしょう。
郷土料理としての位置づけは、新潟県「食の歳時記 その1」で確認できます。
大量のイワシを保存した新潟の知恵「しょっからいわし」と「なまぐさこうこ」
「釣れすぎたイワシをどうするか」という悩みは、今に始まったものではありません。農林水産省の「うちの郷土料理」には、新潟市西蒲区角田浜地区に伝わる「なまぐさこうこ」が紹介されています。
角田浜では、昔は4〜5月ごろに日本海沿岸で大量に獲れたイワシを、エラと内臓を取り除いて大量の塩に漬け、「しょっからいわし」として保存していました。その塩漬けイワシを冬の大根漬けに利用したものが、なまぐさこうこです。農林水産省は、地域で獲れるイワシを保存する生活の知恵から生まれた郷土料理と説明しています。
これは現代の釣果を手軽に保存するレシピとして、そのまま真似するものではありません。大量の塩を使い、長期間かけて作る伝統的な保存食です。ただ、「大量に獲れた魚を食べ切るために保存方法を工夫する」という発想は、現在の釣り人にも通じるところがあります。
詳しい由来は農林水産省「なまぐさこうこ 新潟県」で確認できます。
結局どの料理にする?サイズ・鮮度・手間で選ぶ早見表

小さいイワシは唐揚げや南蛮漬け、中型以上は中骨を外した唐揚げやぬた、数が多いときはつみれに回すと無理なく食べ切れます。料理名から決めるより、「骨をどこまで処理するか」「何匹まとめて使えるか」で考えるのが実用的です。
| 状態 | 向く食べ方 | 考え方 |
|---|---|---|
| 小型・当日 | 唐揚げ、南蛮漬け | 細い骨まで食べやすく、数を処理しやすい |
| 中型以上・当日 | 中骨を外した唐揚げ、ぬた | 背骨を無理に食べない |
| 数が多い | つみれ汁 | 複数匹をまとめて使いやすい |
| すぐ食べない | 早めに冷蔵・冷凍して加熱料理へ | 常温放置を避け、低温管理を優先する |
「新鮮そうだから刺身」「翌日だから必ず加熱すれば大丈夫」といった一つの条件だけで安全性を判断するのは避けます。イワシでは、鮮度低下に伴うヒスタミンと、生食時のアニサキスを別々に考える必要があります。
釣ったイワシで注意したいヒスタミンとアニサキス
釣った魚を料理するときは、「火を通せば全部解決」と考えない方が安全です。特にイワシでは、ヒスタミン食中毒とアニサキスを分けて考えます。
ヒスタミンは加熱しても取り除けない
厚生労働省は、イワシをヒスタミン食中毒の主な原因食品の一つとして挙げています。ヒスタミンは熱に安定していて、いったん食品中に生成されると、加熱調理をしても分解されません。そのため重要なのは、釣ったあとから食べるまで一貫して低温を保ち、エラや内臓をできるだけ早く除去することです。
時間がたった魚について、「唐揚げにするから大丈夫」と考えるのは適切ではありません。鮮度低下が疑われる魚は無理に食べない判断も必要です。
アニサキスは酢や塩だけでは対策できない
厚生労働省によると、アニサキスはイワシにも寄生します。魚が死亡して時間がたつと、幼虫が内臓から筋肉へ移動することがあるため、丸魚は速やかに内臓を取り除き、目視でも確認します。
厚生労働省が事業者向けに示している死滅条件は、-20℃で24時間以上の冷凍、または70℃以上(60℃なら1分)の加熱です。また、一般的な食酢、塩漬け、醤油、わさびではアニサキス幼虫は死滅しないとされています。家庭の冷凍庫は設定や詰め方で実際の温度が変わるため、数字だけを見て生食可と決めつけず、十分な管理ができない場合は加熱調理を選ぶ方が扱いやすいでしょう。
食品衛生の確認には、厚生労働省「ヒスタミンによる食中毒について」と「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」を参照しています。
イワシがたくさん釣れた日は、全部を同じ料理にする必要はありません。小型は唐揚げ、数が多ければつみれ、大きめは骨を外して別料理へ。そこに新潟の「ぬた」「つみれ汁」や保存食文化を重ねると、釣果を食べる楽しみも広がります。まずは釣った直後の低温管理を優先し、その日の量と魚の大きさに合わせて無理なく食べ切るのがおすすめです。
参考にした公的資料
- 新潟県「食の歳時記 その1(概要・春の郷土料理・夏の郷土料理)」
- 農林水産省「なまぐさこうこ 新潟県」
- 厚生労働省「ヒスタミンによる食中毒について」
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」







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