新潟市が2026年10月13日、営業を終えた西堀ローサを含む西堀地下施設について、6つの活用案と費用試算を示しました。報道では「約85億円」「約150億円」「約160億円」など複数の数字が出ており、2025年には「約66億円」「約130億円」という試算もありました。
結論からいうと、これらは同じ費用を示す数字ではありません。初期工事費、30年間のライフサイクルコスト(LCC)、国の交付金なども考慮した市の実質負担が混在しています。単純に「66億円だった計画が160億円に膨らんだ」と読むと、実態を見誤ります。
- 2026年の6案:市の実質負担は約85億円〜約160億円
- 全面廃止:市負担は約160億〜170億円と試算
- 2025年の約66億円:全面活用案の初年度改修費
- 2025年の約130億円:同じ全面活用案の30年間LCC
この記事では「どの案が一番安いか」だけではなく、何を含んだ金額なのかをそろえて比較します。なお、本記事は2026年10月16日早朝時点の公表資料・報道を基にしています。第3回有識者会議は同日開催予定で、その後に条件や説明が更新される可能性があります。
西堀ローサに6つの活用案、結局いくらかかる?

まず押さえたいのは、今回の検討対象が地下1階の旧西堀ローサだけではないことです。新潟市は、地下1階の旧商業区画と地下2階の西堀地下駐車場を合わせた西堀地下施設全体について今後のあり方を検討しています。市の説明ページでも、市民向けには認知度の高い「西堀ローサ」という名称を使いつつ、実際の検討対象は地下施設全体だと明記されています。
10月13日に示された6案について、地元各社の報道を整理すると、市の実質負担は約85億円〜約160億円です。
| 案 | 活用方法 | 初期工事費の目安 | 市の実質負担の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 中央広場のみ通路活用 | 約90億円 | 約85億円 |
| 2 | 全体を地下通路として活用 | 約100億円 | 約95億円 |
| 3 | 7番街側を地下街、6番街側を通路 | 約130億円 | 約130億円 |
| 4 | 6番街側を地下街、7番街側を通路 | 約130億円 | 約130億円 |
| 5 | 全体を地下街とし、当面は中央広場周辺を活用 | 約140億円 | 約145億円 |
| 6 | 全体を地下街としてフルリニューアル | 約150億円 | 約160億円 |
市の実質負担は約85億円〜約160億円とされる一方、埋め立てなどによる全面廃止には約160億〜170億円かかると見込まれています。「使わなければ費用ゼロ」ではない点が、今回の検討を難しくしています。
参考:新潟市「知って考える『西堀ローサ』」、UX新潟テレビ21、NST新潟総合テレビ(FNN)
90〜150億円と85〜160億円、なぜ数字が2種類あるのか
ニュースを追っていると、同じ6案なのに「90〜150億円」と「85〜160億円」が出てきます。これは報道の食い違いというより、比較している費用の範囲が違うためです。
- 約90〜150億円:各案の初期工事費の概算
- 約85〜160億円:初期工事に加え、30年間の維持管理などを踏まえた市の実質負担の概算
NSTの報道では、今回の市負担試算は30年間の維持管理費を含み、さらに国からの交付金を受ける想定が置かれているとされています。ただし、現時点では具体的な国の支援見通しは立っていません。
そのため、たとえば案1では初期工事費約90億円に対して市の実質負担が約85億円と、後者のほうが小さく見えます。これは「30年間使うほど安くなる」という意味ではなく、国費などを含む試算条件が違うためです。初期工事費と市負担を同じ列の数字として足し引きしないことが大切です。
過去の「66億円」「130億円」は何だったのか

2025年12月に新潟市が公表したフィージビリティスタディ(実現可能性調査)を確認すると、以前の数字の意味がかなりはっきりします。
約66億円は「初年度改修費」です。地下1階の商業区画と地下2階の駐車場を全面活用するパターンで、最初に必要と見込まれた大規模な改修費を示しています。
一方、約130億円は「30年間のLCC」です。LCCはライフサイクルコストの略で、初期工事費だけでなく、30年間の修繕・更新費、保守点検費、光熱水費などを含めた長期コストを意味します。
| 2025年FSの数字 | 意味 |
|---|---|
| 約66億円 | 全面活用パターンの初年度改修費 |
| 約95億円 | 30年間で見込む改修費の累計部分 |
| 約130億円 | 初期工事・修繕更新・保守点検・光熱水費などを含む30年LCC |
| 約68億円 | 30年間の収益予想 |
| 約63億円 | 収入と支出の差として示された大幅な採算割れ |
つまり「66億円の案」と「130億円の案」が並んでいたわけではありません。同じ全面活用パターンを、初年度の改修費だけで見るか、30年間の総コストで見るかの違いです。
一次資料:新潟市「西堀地下施設の今後に向けた実現可能性調査(フィジビリティスタディ)について」概要版
66億円が150億円になった? 単純比較できない理由
2025年FSの初年度改修費約66億円と、2026年の全面フルリニューアル案の初期工事費約150億円だけを見ると、「1年足らずで2倍以上になった」と感じます。しかし、この比較は注意が必要です。
UX新潟テレビ21は、今回の試算に有識者会議などで出た安全面の意見を踏まえた追加工事費が加算されたと報じています。また、試算時点が異なるため資材・人件費などの価格条件も同じではありません。さらに、整備範囲や要求する仕様が完全に同一とは限りません。

現時点で「安全対策が何億円」「物価上昇が何億円」といった要因別の寄与額までは確認できていません。そのため本記事では、66億円から150億円への差を物価高だけで説明せず、試算範囲・安全対策・積算時点が異なるため単純比較できないと捉えます。
半分だけ地下街にしても130億円、なぜあまり安くならない?
今回の試算で意外なのが、一部だけを地下街として使う案3・案4でも市負担が約130億円で、全面フルリニューアル約160億円との差が約30億円にとどまることです。
市側もUXの取材に対し、地下街として設定するエリアが半分でも、全体の費用は半分にはならず、差額がそれほど大きくならなかったという趣旨を説明しています。
地下施設では、店舗区画だけでなく、地下通路、地下2階駐車場、避難・消防設備、電気、空調、給排水など施設全体にまたがる設備があります。新潟市が公開している施設資料にも、地下施設全体や6番館・7番館に関係する多数の設備図面が示されています。店舗として使う面積を半分にしても、安全に維持するための共通インフラまで半分にできるわけではない、と考えると理解しやすいでしょう。
ただし、各案でどの共通設備が何億円を占めるのかという詳細な費用内訳は、今後の公式資料で確認したいところです。
廃止でも160〜170億円なら、再活用の方が得なのか
全面廃止に約160億〜170億円かかり、活用6案はいずれもそれを下回る——この数字だけを見ると「それなら再活用した方が得では?」と思えます。
ただし、ここでも結論を急がない方がよさそうです。廃止は施設を使わなくなるため、その後の商業収入や都市機能は生みません。一方で再活用すれば、賃料、駐車場収入、人の流れ、古町全体への波及など将来価値を生む可能性があります。
その反面、2025年のFSでは主要な活用パターンはいずれも事業収支が赤字でした。全面活用パターンでは30年間の収益予想約68億円に対し、LCC約130億円で、約63億円の採算割れとされています。つまり、再活用すれば自然に投資額を回収できるわけでもありません。
さらに、2026年の「市の実質負担」は国の交付金を想定した試算です。国費が入れば新潟市単独の負担は減りますが、公共全体で見れば費用そのものが消えるわけではありません。比較すべきなのは「廃止費より数億円安いか」だけではなく、追加でお金をかけることで何を残せるのかです。
判断に必要なのは「総額」より5つの数字
今後、新潟市が6案を絞り込むときは、160億円という総額だけを見ても判断しにくいと思います。少なくとも次の5項目をセットで見たいところです。
- 新潟市の純負担:国費・その他財源を差し引いた後、最終的に市がどれだけ負担するのか
- 年間維持費:整備した後に毎年どれだけ固定費が発生するのか
- テナント・駐車場などの収入:維持費をどの程度まかなえるのか
- 利用者数:通路や地下街として、どれだけ使われるのか
- 古町・にいがた2kmへの波及:地上の店舗や回遊性、民間投資にどの程度つながるのか
特に重要なのは「建設費が安い案」ではなく、30年間に市が払う額と、その間に得られる価値のバランスです。通路だけに約95億円を使う案と、地下街として約160億円を使う案では、差額だけでなく得られる機能も異なります。
10月16日の有識者会議と年度内方針で何を見る?
新潟市の有識者会議ページでは、第3回会議が2026年10月16日に予定されています。これまでの計画では、第3回で「3つの軸」の比較検討結果や、市民・関係者との対話結果を共有して議論し、第4回で市の判断に向けた最終的な論点を整理する流れです。
今回の6案について今後注目したいのは、①約85〜160億円の費用内訳、②国費をどこまで現実的に見込めるか、③民間事業者がどの案なら参入できるか、④段階整備によって将来の追加負担を抑えられるか、の4点です。
新潟市は年度内に方向性を決める考えを示しています。西堀ローサの問題は「地下街を復活させるか、やめるか」という二択ではありません。廃止にも大きな費用がかかる老朽地下インフラを、どこまで安全に維持し、どんな公共価値を生み出すかという問題として見ると、6案の違いが分かりやすくなります。
まとめ:160億円だけでなく「何を含む数字か」を見る
西堀ローサの再整備を考えるとき、最も混乱しやすいのが費用の数字です。2025年の66億円は初年度改修費、130億円は30年間LCC。2026年の90〜150億円は初期工事費の概算で、85〜160億円は30年間や国費想定も踏まえた市の実質負担です。
そして全面廃止でも約160億〜170億円と見込まれています。だからといって「地下街を復活させるのが正解」と決まったわけではありません。今後は、費用の内訳、維持費、収入、利用者、古町への波及まで含めて比較できるかが重要になります。







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